「僕が君を守ってあげる。だから手を離さないで。」
そんな帯に心惹かれて読み始めました「ICO −霧の中の城−(上)」のレビューです。
宮部みゆきさん著のこの本は「ICO」というゲームが原作でして、宮部さんがゲームをプレイしたことがきっかけで書かれたとのこと。
私は元々原作の「ICO」を知っていまして、謎に満ちたストーリーと厳かな音楽に適度な難易度の謎解き脱出ゲームでとても良作なんですよね。
本屋さんでこの本を見かけて懐かしく思い、気づけば買っていました。
今回は上巻のレビューです。
ニエとして捧げられるイコ少年
物語はイコという少年がニエとして捧げられることから始まります。
イコくんが生まれたトクサという村では頭に角が生えた子供を生贄(ニエ)として捧げるという悪しき伝統があります。
ニエの子は子供の頃はほとんど角が生えていないのですが、13歳になると一晩で角が成長し、それから牢に閉じ込めれられ、御印という服を着せられてニエとして捧げられます。
捧げられるのは通称「霧の城」という場所。
ニエとして生まれた子は身体も上部で頭もよくとても元気という特徴があります。
そして精神面でも強さを持っており、自分がニエとして霧の城に捧げられるのことを覚悟している様子。
霧の城に捧げられた子は普通は帰ってくることが出来ないのですが、イコくんの親友トトがひょんなことから見つけてきた「光輝の書」という魔導書をきっかけに普通のニエとは違う運命を辿ることになります。
光輝の書には特別な力があり、育ての母によって光輝の書に書かれた呪文を織り込んで作られた御印を着せられることになったイコは村長に希望を託されて霧の城にむかいます。
たどり着いた霧の城で謎の少女ヨルダと出会う
御印をみにつけたイコくんはニエとして霧の城に送り込まれることになるのですが、本来であれば石棺の中に閉じ込められてニエの役割をするはずのイコくんは石棺から脱出することことになります。
そして、城の中で俺に閉じ込められていた不思議な少女ヨルダに出会い、2人はともに城を脱出することに……。
霧の城で見る数々の幻影
謎の少女ヨルダを連れて途方もなんか広大な霧の城を散策するイコくんですが、ヨルダと手を繋いでいる時に度々幻影を見ることになります。
また、霧の城の中では黒い霧で出来た怪物が徘徊しており、隙あらばヨルダを連れ去ろうとするのです。
怪物からヨルダを守城を抜け出そうと奮闘するイコくん。
そして、度々目にする幻影(ビジョン)
謎が謎を呼ぶ展開に、まるでミステリー小説のようにストーリーが広がっていきます。
ゲームが原作なだけあり、中々細かい描写がある
本を読んだ感想としては、ゲームが原作なだけあって細かい描写がとても多く出てきたことです。
謎解きの脱出ゲームなので、どういった風に、霧の城の各部屋を脱出していくのか。
時には鎖につかまり、時には台に上り、水に飛び込んだり、ジャンプしたりと実際にゲームをプレーした宮部みゆきさんだからこそ、表現できる、細かい描写が秀逸でした。
実際にゲームをプレーしたことがある人のであれば、ここはあのシーンだななどと言ったことが容易に想像できるかと思います。
またイコと同じように角を持っている石像が出てきたり、黒い霧出てきた怪物にも同じような角が生えていたりと霧の城の過去に纏わるヒントが随所に散りばめられています。
そして、合間合間に挟まる幻影。
これがまさにゲームの演出そのもので、どゲーム画面ではどういった風に演出されていくのか目に浮かぶようでした。
物語のラストに現れる霧の城の主である女王の存在。
この霧の城が何故ニエを必要としていて、なぜイコはヨルダという少女に出会ったのか。
下巻でどういった謎が明かされるのか、とても気になるラストシーンでした。
まとめ
今回は宮部みゆきさん著作「ICO(上)」のレビューでした。
ゲーム原作のノベライズということで、あまり期待はしていなかったのですが、宮部みゆきさんの巧みな文章力によって引き込まれる、読ませる展開に仕上げられていました。
原作ファンの皆さんも、そうでない皆さんも一読の価値はあると思います。
次回は下巻のレビューをしますので、ご興味のある方は是非記事を見に来てください!