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【ショーシャンクの空に】「刑務所のリタ・ヘイワース」感想

今回はスティーブン・キングの名作である「刑務所のリタ・ヘイワース」の紹介と感想です。

「ショーシャンクの空に」原作

今回紹介する「刑務所のリタ・ヘイワース」は傑作と言われ有名な映画である「ショーシャンクの空に」の原作小説です。

 

この小説はゴールデンボーイという本の中に中編(180ページ強)として収録されています。

 

私は以前から「ショーシャンクの空に」がとても好きな映画でして、原作を読みたいと常々思っていました。

映画自体も傑作と名高く、人生に行き詰まった時とかにたまに観たりすることもよくあります。

心の処方箋のように観ていた映画の原作を読んで感じたことをつらつらと書いていきます。

 

 

主人公はレッド

「刑務所のリタ・ヘイワース」では囚人のレッドが主人公として、物語が進んでいきます。

 

この小説で一番重要な存在なのはアンディーデュフレーンという男なのですが、主人公はこの男と一番親しかった囚人であるレッドです。

 

なぜかというと、小説は最初から最後までレッドの書いた手記を読み上げるような形で進んでいくからです。

 

レッドから見たアンディーという一人の男の凄さを淡々と過去を回想しているような形で描かれます。

レッドの視点を通してアンディーやショーシャンク刑務所の人々の生活や習慣、人生を観察しているかのような感覚です。

アンディーデュフレーンという男の生き様

 

この物語の主人公はベッドですが一番重要なキーパーソンはアンディです。

 

アンディーは銀行の副頭取として出世しますが、自分の妻とその不倫相手を殺した無実の罪でショーシャンク刑務所に投獄されることになりました。

しかし、齢30歳にして銀行の副頭取になる男はそこら辺の囚人とは、人間としての格が違いました。

 

アンディーはいつも他の囚人とは違って自分の中の希望をなくさないという生き方を貫いています。

ビジネスパーソンとして十分な地位を獲得し、家族もアンディーですが無実の罪で投獄されることになり一気に人間として、どん底まで落ちてしまいます。

 

しかしそんな中でも様々なエピソードを通してアンディーの信じ続ける希望というものが、読んでいる私にも感じ取れるほどの生きざまが描かれていました。

ショーシャンク脱獄までのアンディーの軌跡

アンディーはショーシャンク刑務所の中で様々なことを行ないます。

刑務所の中に図書館を作り、囚人に教養を教える

アンディーはその粘り強い交渉力と、お金に関する知識を刑務所で働く人間たちのために使うことによって、刑務官からの確固たる信頼を築き上げて行きます。

 

どういった株を買えばいいか、どうすれば節税ができるか、また申告の書類を代わりに作成してあげるなど実際の銀行員と同じように働きはじめます。

 

そんなアンディーは図書館を仕事用の部屋に割り当てられ、そこで過ごすことになります。

アンディはそこに他の囚人達を集め、教養がない囚人には勉強を教え高卒の学位を取らせたり、教養を身につけさせたりします。

リタ・ヘイワースのポスター

 

アンディーは自分の部屋の壁にレッドから入手したポスターを貼っていきます。

 

小説のタイトルにもなっているリタ・ヘイワースはこのポスターの一つです。

 

アンディーは刑務所生活の中でいくつかポスターを変えており、最終的にはリタ・ヘイワースでは無くなるのですが、最初にレッドに注文して手に入れてもらったポスターがリタ・ヘイワースでした。

 

レッドは2ドル50セントでアンディーにポスターを売るのですが、このポスターが物語のキーアイテムとして中々重要な立ち位置にあります。

脱獄のシーンはほとんどレッドの想像だけどリアル

 

アンディー最終的にはショーシャンクを脱獄するのですが、この脱獄どのようにされたかについてはレッドの想像という形で語られます。

 

ポスターによって隠されていた壁の穴からアンディーは脱獄するのですが、その脱獄の成功には映画では描かれなかった様々な要素がからんでいました。

 

アンディーの趣味の地質学による知識。
脱出に使った配管の構造をどう知ったか。
どのように壁に穴を開けたか。
穴をほった壁のセメントはどう処理していたのか。
なぜ気づかれなかったのか。

 

どの様な要素が絡んでアンディーは脱獄を成功させたかについて、およそこうだったのではないだろうかとレッドが語っています。

描かれる人生の中の希望と絶望のコントラスト

 

刑務所に投獄されるということはこの人間社会で生きているものとして最底辺の犯罪者としての烙印を押されることに他なりません。

 

仕事も地位もすべてを失った囚人達は人生のどん底といっても過言ではありませんよね。
しかし、アンディーはその中にも希望を見出します。

 

希望はいいものだ、たぶんなによりもいいものだ。
そしていいものはけっして死なない。

 

アンディーはレッドへの手紙の中でこう語っています。

 

刑務所の中という人生の絶望の中にも、外の世界で再び生きるという希望を忘れなかったアンディー。

 

人生の中の光と闇のコントラストを強烈に描くことによって、アンディーの希望に照らされて変わっていくレッドの心境がじわじわと読み手に伝わってきます。

映画との違いも多少あり

 

原作小説ですが、映画とも多少違いがあります。

 

例えば映画ではポスターはリタ・ヘイワースだけですが、小説ではいくつものポスターが登場します。

 

また刑務所全体にレコードを流すシーンはありませんし、映画内で殺されてしまったトミーという青年は買収されて他の刑務所に移動しただけとなっています。

 

また個人的に映画ですごく好きな部分なのですが、レッドが仮釈放委員会と面談するシーンも小説にはありませんでした。(すごく良いシーンなんだけどなー)

 

脱獄後にアンディーが手にする資産の、投獄前に準備していた設定になっていますし、レッドがアンディーからの手紙を受け取って泣き崩れるシーンも映画にはありませんね。

 

とはいえ小説には小説の良さ、映画には映画の良さがそれぞれありますので、作品としてはどちらも完成度が高いと思います。

まとめ

今回はスティーブン・キングの「刑務所のリタ・ヘイワース」の紹介でした。

 

人生に置いて大事な「希望」とつらい「現実」を双方絶妙に描いた傑作だと思いますし、映画と原作両方にふれることによって、さらに新しい発見があったりしてなかなかおもしろいです。

 

「ショーシャンクの空に」が好きで、原作も気になっているにひとは是非読んでみてください。

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