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つないだ手と手に、宿る永遠「ICO −霧の中の城−(下)」(宮部みゆき)

宮部みゆきさん著の「ICO −霧の中の城−(下)」のレビューです。

上巻の最後では霧の城の主である女王が登場し、霧の城の秘密の一端を匂わせるラストでした。

下巻では更に沢山の秘密が明らかにされていく展開で、ページをめくる手が止められませんでした。

物語は過去へ−ヨルダ承前編−

下巻の前半はヨルダの過去編です。

 

なぜヨルダが塔の籠のに閉じ込められていたのか。なぜそこにイコくんが現れることになったのか。

その根源的なエピソードが語られていきます。

 

物語の舞台は遠い過去の霧の城。

霧の城にはまだ人々が生活しており、ヨルダも霧の城の城主も健在だった時にさかのぼります。

ヨルダは剣士オズマとの出会いから霧の城についての疑問を持ち始める。

 

過去のヨルダは霧の城から出ることが出来ず、外の世界を知らない少女でした。

なんとか城の外に出ようとしますが、母親である女王の不思議な能力でそれも阻止されてしまいます。

 

自分の母親である女王の底しれぬ力。表面上は従順に付き従っている家来や大臣たちの顔に浮かぶ女王への恐怖にヨルダはだんだん疑問をもっていきます。

 

そんな折、国中から有能な戦士を集めて行われる闘技大会が霧の城で始まります。

そこでヨルダは頭に角を生やした手練の剣士オズマと出会います。

 

父が早くに亡くなってしまったヨルダはオズマに父親の面影をみて、城のものに隠れて幾度か会うことに。

霧の城の片隅に佇む「風の塔」から物語は急展開していく

ヨルダは霧の城の片隅にたたずむ不気味な「風の塔」にかかわることになっていきます。

 

その塔には霧の城の重大な秘密があり、剣士オズマもその塔に用が有り霧の城におとずれたことを知ったヨルダはある一策を講じて、風の塔に侵入することに成功します。

 

しかしそこにはツラい事実が存在しており、その事実によってヨルダの閉じ込められた生涯は急激に動き出し始めます。

 

剣士オズマが霧の城に来た理由。霧の城の城主である女王の真実。ヨルダの過去。
様々な真実が明らかになります。

全体的な感想

 

物語の構成はイコとヨルダの出会いから始まり、断片的に過去の出来事が絡んでいきます。

 

どこか憂いを含み言葉も通じない少女であるヨルダをイコくんはなぜか助けようとします。

 

その理由も終盤で明らかになるのですが、最終的にはそれをさらに上回る真実が待っています。

 

謎解き脱出ゲームが原作ですので、そのあたりの描写が細かく実際にゲームをプレイしたことのある人にはとても懐かしく感じるのではないかなと。

 

また原作では細かい設定を語ってくれるシーンがほとんど無いのですが、この小説の中では裏の設定が緻密に練ってあり、元々こういった設定が用意されていたのか、宮部さんが考えたのかがすらわからないほどなめらかに世界観が融合しています。

 

脱出劇の細かい描写は小説から入った人にとっては少々わかりにくかったり、やや冗長といった感は否めませんが、それよりも物語の真実に迫っていくストーリー展開に惹きつけられるものがありました。

 

イコとヨルダは言葉が通じないのですが、それゆえに互いの心情を探り合ったりするもどかしさがあるのですが、そこがまた良かったりします。

 

言葉がわからないからこそ、相手の考えていることを親身になって考えたり、さらに二人が丁度思春期の男女であるということも大きなポイントなのかなと個人的には感じました。

 

またこの小説ではヨルダの考えていることが彼女の視点でわかるようになっているのですが、原作のゲームでは謎の言葉を話していて最後まで彼女が何を言っているのかはわからずじまいといった感じでした。(むしろそこがミステリアスで良い点でした。)

 

ゲームをプレイして彼女の過去を知りたいと思っていた方には小説版を読むのをおすすめしたいです。

 

ノベライズではあるのですがファンタジー小説として完成度も高いですし、ミステリアスな雰囲気もしっかりと描写されていました。

 

また廃墟然としている霧の城の過去の繁栄や、女王が何故恐ろしい人物なのかについても詳細に語ってあり、設定の細かさにもぬかりありませんでした。

まとめ

今回は「ICO −霧の中の城−(下)」のレビューでした。

 

ゲームのノベライズですが小説として綺麗に完成されてますし、引き込まれる展開で気づけばページをめくっていました。

 

すこし昔の小説ですが、厳かなファンタジー世界とミステリアスな展開が好きな人は楽しめると思いますのでオススメです。

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